書評倶楽部・空気と戦争
産経新聞 2007年10月27日
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産経新聞 2007年10月27日
![]() 緻密な取材と、歴史分析で定評ある作家、猪瀬直樹氏の東京工業大学での講義を柱にまとめた書である。 理工系の学生、院生を相手に、いかに日本にとって技術力が必要かを訴えるにあたって、陸軍中尉、高橋健夫氏のエピソードを紹介しながら、 戦前の日本を覆った空気について分析している。 高橋氏は人造石油の開発を夢見た技術者で、東大から商工省の燃料研究所、陸軍省燃料課へ進んだ。26歳の高橋中尉は上司とともに、 東条英機陸軍大臣のもとに、石油需給予測資料を持って馳せ参じた。蘭印に南進でもしなければ、少資源国の日本は干上がることを示す資料に、 東条大臣は「泥棒はいけない」と語ったという。 日本を取り巻く情勢が風雲急を告げる昭和16年、現在の永田町の一角に、青年将校、民間人合わせて27人からなる総力戦研究所が設立された。 所員の平均年齢は33歳。研究の一環として作られた模擬内閣は、連日、日米開戦についての分析を行い、「日本必敗」と結論づけた。 戦闘そのものよりも輸送面での脆弱性が問題視されたからだ。 私は、安倍政権で国家安全保障担当補佐官を務め、国家安全保障会議の創設に向けた法案作成にあたった。会議を支える事務局のあり方を考えると、 戦前の研究所の成果と結果に興味を抱かざるをえない。 時の政府は南進を決行した結果、模擬内閣の分析どおりの敗戦に帰す。猪瀬氏は、その背景に日本の「空気」の存在を指摘する。 山本七平氏の『「空気」の研究』とも共通する指摘だ。 「空気が読めない」人をKYというらしい。うつろいやすい「日本の空気」を超えて、冷静、かつ客観的に国家戦略を練る装置と、 それを支える人材、大局的決断を下せる政治家の3点セットが必要とつくづく痛感した。 |
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