■環境問題といえば、この人をおいてほかにはいない。環境大臣を歴任した小池百合子衆議院議員に鳩山政権が掲げるCO225%削減目標についてどう考えているのか、お話しを伺った。
私はとても野心的な目標だと思います。地球温暖化対策として、気温上昇を抑え、温室効果ガスの濃度をバランスさせるために必要な目標値だと思います。
しかし、わずか10年程度で達成しなければならない目標にもかかわらず、目標と現実のギャップはあまりに大きい。それを埋めるのは政策であり、技術革新であり、国民の意識です。
私はいつも日本の武道の心構えである「心・技・体」に例えています。心は意識、技は環境技術、体は税や規制など法整備ということです。これらを総合的に進めなければなりません。つまり、目標を掲げるには、それをどうやって実行していくか、ロードマップがなければいけない。さらに技術革新や制度のバックアップも必要です。そのためには現実を知ることも重要です。2020年の段階で90年比25%削減というのは、全国のクルマは州の前半は使わないとか、後半はすべての工場の操業を停止するとか、想像を超える制約を必要とします。かなり非現実的なものですが、一方で環境技術の革新によって、新しい成長産業を育成することで、新しい稼ぎ頭を確保することにもなる。
私は、すでに電気自動車に乗っていますが、航続距離や充電設備など、課題は多いことをユーザーとして痛感しています。もちろん、電気自動車は、スタートしたばかりなので、問題がないはずがない。社会インフラはどうあるべきかなど、提言をしようと思っています。
夢とすれば、10年後の子供たちが「二十世紀のクルマは石油で動いていたんだね、へえ?」とビックリするほど、技術革新を進めたいですね。電気自動車は、きっと電気屋さんで買うことになるのでしょう。物作りの分野も変わってくる。おそらく部品数が激減するでしょうし、自動車会社内部でのヒエラルキーも変わるでしょう。裾野が広い自動車産業だけに、この変化はプラスとマイナスが共存するなあと、想像しています。カーレースも、あの爆音が消えて、静かなものになる。ちょっと不気味ですよね。
クルマのCO2の排出量は日本の場合、28・7%。そういうなかで、C02の25%削減と高速道路の無料化、暫定税率の廃止は、まったく相容れない政策を同時に進める矛盾があります。これはありえない。ありえないことを知りながら、こんなに矛盾した政策を打ち出すのは不誠実と言わざるをえません。
つまり、一方でC02の25%削減に興味のある人たちの関心をひき、一方で、25%の意味がよくわからないけれども、高速道路が無料化になればいいねという人たちの関心をひく。”選挙目当て”、“政局第一”そのものでしょう。選挙だからとはいえ、あまりに不誠実だと思いますね。
25%削減案に対し、世界は賞賛しているといいますが、それは冷徹な世界の壮大なゲームの真髄を理解していません。欧州勢は日本が彼らの戦略にまんまとのっかってきたと、喜んでいるのです。京都議定書のゲームは終わっています。日本が20%か、25%かは無関係です。「がんばっってね」といった受け止めです。
地球温暖化は壮大なるゲームです。90年比という基準年を05年に変更するなどゲームのルールをどう決めるかは意味があります。オバマ政権も2020年までに05年比20%減と、新たな基準を打ち出しています。
国際交渉の現場の関心事は、日本の削減策ではなく、いかにアメリカと中国をゲームのプレイヤーに引き込むかです。アメリカと中国のCO2排出量はすでに世界の排出量の50%に上ります。オバマ政権はグリーンニューディール政策を打ち出していますが、議会対策で手こずっています。最大の理由は、ただ中国をサポートするだけでよいのかという議論です。
いずれにせよ、京都議定書の段階はすでに終わっており、いかにアメリカと中国を新たなゲームに引き込むか。誰がルール設定をするか。
排出量取引の問題にしても、今後森林吸収源の取り扱いを確実なものにしないと、巨額な税金をつぎ込んで、海外から空気を買う話になります。納税者の納得を得るのは一苦労です。最悪なケースは、新たな金融商品で誰かが儲けて、日本経済が空洞化し、知的財産である環境技術が盗まれ、地球温暖化が進まないこと。まさに国家戦略局の仕事だと思いますよ。
■最後に民主党は4年以内に地球温暖化対策税を新設すると明言していますが?
その前に、現行の高速料金の休日千円という制度をエコカー対象に限るべきです。ガソリンの暫定税率は堅持し、税収は環境技術の研究開発や社会保障に充てる。その上で、本格的な環境税を設計して、新たな制度に移行させるのです。暫定税率を廃止して、四年後に環境税導入という時差が気になります。
私はエネルギーの安全保障の観点からも、21世紀の移動体をガソリンに頼らない低炭素な社会を作ることを国家ビジョンに定めるべきと考えています。せっかくの政権交代をチャンスとして活かすことを勧めます。
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