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エコ・インテリジェントビルの発想

社団法人 日本ファシリティマネジメント推進協会
機関誌巻頭言
2009年4月1日発行

 近年、地球温暖化についての意識が高まりを見せています。
 2005年、アメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナ、2007年にバングラデシュで、2008年にはミャンマーで発生したサイクロンなど、世界各地で自然災害が猛威を奮いました。国内では2008年夏、東京・豊島区で集中的に発生したゲリラ豪雨が、水道工事中の作業員を河口まで流し、五人もの死者を出した事件も記憶に新しいところです。激甚化する自然災害の原因として、昨今の地球温暖化が影響しているという説があります。科学的な実証結果を待つ前に、多くの人が、自然の変化を肌感覚で感じ取っています。ヒートアイランド現象という言葉も、もはや新語とは言えません。
 私は小泉政権下で環境大臣を務めました。水俣病や四日市ぜんそくなど、国内の公害対策を中心とした環境行政も、地球温暖化対策や国境を越えてのリサイクルを含む循環型社会形成など、地球規模の課題へと比重が移りつつあります。環境大臣として、地球温暖化問題への理解と協力を仰ぐため、各地で講演をして回りましたが、どうも反応が芳しくありません。問題の本質を理解はしても、行動につながるようなインパクトが必要と痛感しました。地球温暖化は産業革命以来の人間のライフスタイルに起因するものです。ならば、一人ひとりの行動に変化をもたらさない限り、改善は望まれません。
 そこで、最も身近なところからの変化を促すため、ビジネスマンをターゲットに、軽装運動「クールビズ・キャンペーン」を始めました。「一点突破、全面展開」の手法です。2004年、まず環境省内で始めたキャンペーンは職員に軽装を義務付け、その分、室温の設定を高めました。翌年の05年には、政府、衆参議会、財界に働きかけ、オールジャパンのキャンペーンへと拡大させました。
 その後のクールビズの拡がりは皆様もご存知の通りです。
 エコを記号化し、意識改革をもたらすための第一段階でした。
 身近な課題から始めましたが、真のねらいは発熱源である人間のファッションに留まるものではありません。クールビズの対象は、コンピュータやコピー機などのオフィス機器、オフィスビルそのものの構造、営業活動に関係する車やトラックなどの移動体の燃費まで、すべてです。そこから街全体、地域、国まるごとのクールビズにつながれば、結果として日本の環境力が強まると考えたのです。
 地球温暖化の原因である温室効果ガス、なかでもその太宗である二酸化炭素の排出割合を部門別に分析しますと、工場などの生産現場を含む産業部門での排出が全体の6割を占めます。どのようなエネルギー源を使うか、どう経営効率を上げるかは企業にとっての最大の戦略の一つですが、経済界の自主的な抑制効果もあり、CO2の排出は横ばいないしは削減の方向を示していました。一方、オフィスビルを含む業務部門では3〜4割の増加傾向が顕著です。だからこそ、オフィスでのクールビズ運動から着手することにしたのです。
 ファシリティー・マネジメントの考え方は、オフィスでの総合的なクールビズの実現に大きな役割を果たしてくれることでしょう。高効率の管理システムは、光熱費の削減など、経営の観点からも必ず報われるものであり、個々のオフィス、ビルが環境効率を上げることで、街を、地域を、そして日本全体での温暖化対策へとつながります。オフィス機器のクールビズ化も日進月歩です。環境配慮は企業の経営指針においても、もはや不可欠な要素となってきました。
 かつて、情報化時代の到来を踏まえ、IT対応のオフィスビルをインテリジェントビルと呼ぶようになりました。私は今、この名称をさらに高度化し、適切な環境対応で建設、リフォームしたビルをエコ・インテリジェントビルと呼ぶべきと提唱しています。CASBEEシステムなど、エコ・インテリジェントなビルの定義づけ、また基準を定め、ビルごとの格付け次第で減税の恩恵を受けるか、増税の負担を課すかなど、制度面での後押しも有効でしょう。
 日本における環境対策は高温多湿の気候を共有するアジア諸国でも活用できます。沿海部では冷蔵庫売り場のように高層ビルが林立する中国でも、日本にならい「清涼商務(クールビズ)」が導入されました。韓国でも意識変化が起こっています。昨年8月にはニューヨークの国連本部でもクールビズが実践されました。日本の小さなメッセージは確実に世界へ発信されているのです。
 日本が提唱するクールアースの考え方は、2008年の洞爺湖サミットで世界の共有認識となりました。地球温暖化対策で日本が世界をリードし、つねにプラスのメッセージを発信し続けるためにも、ファシリティー・マネジメントを日本独自のビジネスモデルへと磨きあげ、大きな実績を挙げられることを期待しています。






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