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ブックレビュー「ふろしきのココロ」

女性セブン 2009年8月13日号


   贈り物を包んだり、収納に使ったり、はたまたタペストリーとして飾ったり。日本で古くから親しまれ、いまなお私たちの生活の中で息づく暮らしの布――風呂敷。
 その基本の結び方から基礎知識まで、元環境大臣の小池百合子さんが風呂敷の心と技について綴った『ふろしきのココロ』がいま、話題になっている。
 「私が初めて風呂敷に着目したのは、小泉内閣で環境大臣を務めていたときのことです。ゴミ減らしの観点からレジ袋撤廃を考え、レジ袋に代わるものとしてマイバッグやエコバッグの活用を提唱していたのですが、環境大臣の私がエコバッグを推奨するのは、当たり前といえば当たり前でしょ。せっかくだったら、皆さんがもっと注目してくれて『そうだ!』とわかりやすいこと、まだ気づいてないけれど説明すれば納得できること、そんな提案をしたいなと考えていて。ある日、ふとひらめいたのが風呂敷だったんです」
 風呂敷は一枚の布でありながら、さまざまな用途に使われ「捨てる」ことはない。人の手で結び、包み、目的にあわせて使ったあと、ほどくと再び一枚の布に戻る。環境問題を考えるうえでもっとも大切な「循環」を体現する布であることに小池さんは注目したという。
 「風呂敷という一枚の布はレジ袋撤廃だけなく、循環型社会の構築を目指す私には最適なものに思えたんです。そこで日本が誇るエコアイテムに『芸術』という視点も加えて、風呂敷をオリジナルでつくってみました。それを海外からいらしたお客様に贈り、日本ならではのエコメッセージとライフスタイルを伝えたいと思ったんですよ」
 そんな願いから生まれたのが「もったいない」ブランドの風呂敷。モチーフは江戸時代の画家・伊藤若冲のモダンな絵。絵のまわりを色帯で囲むデザインからブランドネーミングやパッケージカバー考案まで、すべて小池さんが行った。
 「環境大臣の私がここまでやっていいのかしら? というくらいこだわりましたね(笑い)。クールビズがあれだけ広がったのは、エアコンの設定温度を調整し、省エネ・低炭素社会を実現するという目的だけでなく、ラクでステキなファッションとしてみなさんが楽しむことができたからだと思うんです。面白い、私もやってみようと無理なく取り入れられることって大事。そういう気分へ持っていって初めて意味があるのだから、風呂敷にもこだわりたかったんですよ」
 「もったいないふろしき」の素材はペットボトルのリサイクル繊維。こんなところにも小池さんのこだわりが見える。
 「素材をお伝えするだけで海外のお客様たちは驚かれます。『えっ、これがペットボトル?』と。中でもいちばん感激してくださったのは、ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさん。風呂敷だけでなく、『もったいない』という言葉にも感激してくださいました。以来、マータイさんは『日本にはもったいない≠ニいう言葉と心があって、それが環境を守っている』と世界中の人々に紹介してくださっています。
 風呂敷って世界各国いろいろな種類があるんです。でも、日本の風呂敷の模様の繊細さ、包み方のバリエーションの豊富さは世界に誇れるものだと思うんです。ほらっ、こんな感じで」
 そういって、小池さんは手元にあった『ふろしきのココロ』を「もったいないふろしき」で、ささっと包んでみせてくれた。棹包み。かつて棹にかけて持ち運ぶ際に用いられた包み方で、キャリーバッグの持ち手にかけたり、サイズが大きければ結び目を肩にかけることもできる。その他にも、日本酒やワインを手土産に持っていくときに便利な「ボトル包み」、買い物のときレジ近くでさっと広げてエコバッグがわりに使える「手提げ袋」など、『ふろしきのココロ』には、包み、結ぶことでいかようにでも変わっていく風呂敷の表情が幾通りも紹介されている。
 「環境大臣として、子供たちに風呂敷の存在とよさを伝えるために、多くの幼稚園や小学校を訪れましたが、事前に風呂敷を用意してもらって、目の前にあるものを一緒に『包みっこ』すると、子供たちは本当に喜びます。これは私にとっても楽しい記憶ですが、きっと子供たちも一生覚えておいてくれると思うんです。それが地域の自然を包むことになり、次の時代、そのまた次の時代へとつながっていくといいですね」
 風呂敷で包み、結ぶもの。それは物だけではない。そこで伝わる思いもまた大切にしていきたいという。
 「フレキシブルって言葉があるでしょ。ある財界人が、それを風呂敷にかけてフロシキブル≠ネんていっていたけど(笑い)。本当に風呂敷って柔軟性があるフロシキブルな布だと思う。たとえば、昔はお中元の季節になると一軒一軒訪ねて、ご挨拶をして、贈り物を風呂敷に包んで、差し上げた。そしてその風呂敷でまたお返しがきた。そういう循環が社会の潤滑油になっていた。最近は世知辛くなってしまったけれど、昔から日本人が風呂敷に包み込んでいた思いもまた復活できればいいんじゃないでしょうか」
 そう話す小池さんもまた、とてもフロシキブル≠ネ女性だ。どうすれば、そのフロシキブルな精神を忘れないでいられるのだろう。
 「毎日いろいろなことがあって、子育てや介護や職場の人間関係、いろいろ悩みはつきませんよね。でも、そこばかりに心を悩ませていても解決策は見つからないから、発想を変えたり、もう一度原点に戻ったりしてみるといいですよ。たとえばだんな様の残業代を削られたら、そのかわりに時間をもらったのだから有効に使おうというように。私も残念ながら男社会にいて、ときどき卓袱台を投げたくなることがあります(笑い)。でも、ひっくり返した卓袱台を自分で掃除しなきゃいけないから。だったら発想を変えちゃう。大風呂敷を広げてもいいんです(笑い)。ポジティブに考えることを楽しんでいければいいですね」
 






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