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着眼グローバル 第6回 持ち合い株問題解決に“秘策”あり |
フォーブス日本版2001年6月号 |
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日本経済のシステム変更は待ったなしのところまできた。危機を認識し、分析し、そしてスピーディーに着手する。残された時間は少ない! 森政権最後の置き土産、緊急経済対策が決まりました。ちなみに「緊急経済対策」はこの10年間で4回目です。これまでに投じられた金額も、31.4兆円に上ります。 私は与党政策責任者の一員として3つのプロジェクトを担当しました。中でも株式買い上げ機構に関するプロジェクトは難物で、与党内、政府内、それぞれから議論が噴出しました。けっきょく、実施時期や方法をめぐって明確な結論に至らず、作業は続いています。単に株価上昇を目的とするPKOか、銀行の保護か、それともわが国の資本経済を土壌から変えることを目的とするか、それぞれの思惑で時期も手段も変わってくるからです。 銀行の株式を政府機構で買い上げ、議決権を政府が有し、売却損も政府が面倒を見る…。これは社会主義統制経済以外の何物でもありません。私自身は元来、市場原理を優先する自由経済を信奉しています。だから、当然、買い上げ機構方式を拒否すると思われるでしょうが、今回は違います。日本経済の危機を認識しているからにほかなりません。 この経済危機を乗り切るのは並たいていのことではありません。株価は大幅下落、政府がデフレを宣言し、悪循環が続く。さらには誰も明確な海図を描けない。まさにピンチです。不良債権のオフバランス化や土地の流動化策なども今回ようやく大胆に進めますが、5年遅れの感は否めません。その間、何をしていたか。権力闘争です。 まずは危機を認識する。そのうえで危機を分析し、何を優先すべきかを定め、スピーディーに実行する。このピンチをどうチャンスに変えるかが問われています。これらの課題を前に、私は銀行の保有株、いわゆる持ち合い株の解消を一気に図る絶好のチャンスと考えます。日本式資本経済を改める好機であり、新BIS制度の導入を控えた今こそ、資本主義の再設計をすべきです。 単なる株価操作、PKOを図ろうとしても、株式市場でのアクティブ・プレイヤーの半分が外資という現状では、そうは問屋が卸さない。それどころか、売り浴びせに合う可能性が強い。アービトラージュ(さや取り)の回避は重要な課題となることでしょう。 そこで、まず銀行の株保有を原則禁止することから着手します。 銀行の株式保有の原則禁止を 日本版グラス-スティーガル法です。中途半端な制限では、銀行が保有する価値の低い株を任意に選ばせることになり、結果的に機構が買い上げる持ち合い株はジャンクだらけとなるうえ、日本的な株式持ち合い制度は温存されます。これでは何をやっているか、わからない。ですから、ここは法的な強制力が必要と考えます。 ここが社会主義的と揶揄される点ですが、わが国を社会主義経済とすることが目的ではありません。日本と同様、歴史的に持ち合い制度を続けてきたドイツでも政府の補助を付けつつ、資本金の60%までの持ち合い保有制限を実施しました。 銀行自身による自主的な持ち合い解消に任せよという意見もありますが、4月に相次いで誕生したメガバンクの中身を見ても、納得がいきません。その一例として名称を日本名で、「三井住友銀行」が英文名では「SMBC」で、住友のSと三井のMがひっくり返っています。互いのメンツを保つ、日本的な解決策です。財閥を越えての合併だけに理解もしますが、これら日本の銀行がスピーディーに社会的使命を全うすることを期待するのは無理かもしれません。 銀行は、この買い上げ機構の設立には猛反対です。「銀行として固有のニーズなし」と言い切りますが、銀行のニーズよりも市場と社会のニーズを優先に考えたいと思います。ましてやPKO、株価調節はもはや幻想にすぎません。 いずれにせよ、今年9月には時価会計導入後の決算がやってきます。金融庁はさほど問題視していないようですが、時価会計決算では銀行の持ち合い株が資本直入されます。持ち合い解消で、株価が上がれば、売りが出るという悪循環を断ち切らねばなりません。 売却される側の企業の都合もありますが、銀行の株式保有の原則禁止となると、話は変わってきます。それに優良企業ならば、自社株買いする能力もあるでしょう。その際には新しい金庫株の制度が生きてきます。自社株買いの資金調達には社債の発行という手段も活用され、それこそ金融行政が目指す直接金融の道へと進むことになります。 ですから、機構の名称は「株式買い上げ」や「株式取得」機構といった矮小化したものではなく、「持ち合い解消機構」「日本資本経済再生機構」と目的を明確にした名称が適当でしょう。 銀行が保有する事業会社の持ち合い株は約20兆円。逆に事業会社が保有する銀行株は約10兆円。しめて30兆円規模の日銀特融に政府保証を付けて、一挙に銀行と事業会社の持ち合い株の買い上げを行います。そしてETF(上場投信)などを通じ、市場で売却することで2次ロスを最低限に抑え、本来の目的である日本の資本経済を再生させるのです。これが小池案です。 百歩譲って、銀行が保有する企業の持ち合い株の買い上げに絞るのも一案です。 かつての昭和40年不況(証券不況)でも2度にわたって株式買い上げ機構が設立されました。日本共同証券と日本証券保有組合です。いずれも試行錯誤もありましたが、折からの高度成長を追い風に、2次ロスどころか、含み益を出す結果に終わっています。しかし、右上がりの経済の真っただ中であった当時と比べ、現在は産業構造の大変革、IT化、市場のグローバル化に加え、デフレ経済です。その点を十二分に心しなくてはいけません。 そこで個人の株式投資促進のための税制や確定拠出型年金の導入が不可欠となってきます。「権威ある」自民党税制調査会もようやく重い腰を上げるところまできました。税制改正は年末の風物詩であり、当初は季節はずれの税制調査会の開催そのものにも異論が出たようです。 政府の税調も及び腰ですが、そもそも護送船団方式の銀行、ノーリスクの郵貯など、戦後から続く日本固有の金融や税制にかかわってきた人たちが、21世紀型のグローバルな金融、税制について、どこまで敏感なのか、不安が残ります。 しっかり危機を認識し、さらには新たなあるべき姿を構築するという観点で、思いきったかじ取りを願いたいものです。 乱高下の激しいアメリカ市場をにらみ、また自民党の総裁選を横目で見つつ、日本経済の再生に専念する毎日です。 |
| 衆議院議員 小池 百合子 |
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