ボタン
プロフィール 基本理念 活動記録 コラム・論文 アルバム ムービー メルマガ 後援会:フォーラムユーリカ


 着眼グローバル 第9回
 日本の景気回復は女性がリードする

フォーブス日本版2001年9月号


待ったなしの構造改革が始まる。痛みを伴う不良債権処理では雇用確保が最重要課題だ。女性の潜在能力を引き出してこそ雇用が拡大し、真の景気回復につながる。発想の転換が必要だ。
 「骨太の構造改革」「聖域なき構造改革」に向けて、経済財政諮問会議の基本方針が公表されました。今年1月の省庁再編を機に予算編成、財政方針の決定など、これまで旧大蔵省に一極集中していたきらいがあった経済・財政の重要施策の立案機能を内閣府に移したことで、経済財政諮問会議の役割がぐっと重みを増してきました。
 竹中平蔵経済財政政策担当大臣がトヨタの奥田碩会長や本間正明阪大大学院教授などの諮問会議議員の意見を集約し、次々に新政策を打ち出します。そのたびに、旧来制度からの意識転換が不十分な国会の議員は目を白黒させては、「こんなはずでは」と嘆き節ばかりが聞こえてきます。
 人気絶頂小泉政権のエンジン部分である経済財政諮問会議がまとめた基本方針のポイントは、なんといっても不良債権の早期処理の部分です。その分、雇用政策が手薄になっていることが心配です。雇用対策についてはわずか5行しか触れられていません。
 不良債権のオフバランス化、その処理を進めることはやむを得ないとしても、大量のリストラ、失業、倒産が起こることは避けられない現実です。

不況脱出のカギは女性の活用にあり

個人消費の低迷といわれて久しいですが、先日銀座でオープンしたフランスの高級服飾メーカー、エルメスのオープン日には前日からの徹夜組を含め、長蛇の列ができました。
 99%が女性客です。エルメスといえば、人気のハンドバッグの値段はざっと70万円。おまけに予約から入手まで2年は待たされるという代物です。さらに地価の値下がりで都心を中心に建設が続くマンション、ワンルームマンションの買い手にはOLなど、女性の姿が目立ちます。不況、不況とうなだれてばかりの男性陣を横目に、女性たちは元気です。
 消費の主役というだけでなく、起業や企業の担い手としても女性の活躍も目立つようになりました。小泉政権でも5人の女性閣僚の登用が高い支持率の一因でもあります。
 金融アナリストで評論家のピーター・タスカ氏も以前から「女性という最大の資源を有効に活用していないことこそが日本の不幸だ」とたびたび言及しています。雇用面でベンチャー企業が果たした役割の大きいアメリカでも、介護や食品関連の事業にITを絡めた女性ベンチャーの活躍が目立ちます。
 例えば、自宅で開いたガレージセールでの経験を生かし、オークションのeビジネスを立ち上げた女性がいます。これがオークション・サイトとして急成長したeベイという会社です。家庭の主婦の発想が実を結んだ一例でしょう。女性には女性特有の感性、目があります。
 特に日本は、ことごとく男性中心で設計された国であることはまぎれもない事実であり、今のにっちもさっちも行かない状況を長引かせているのです。一方、ITはもちろん、育児、介護、環境、バリアフリーの都市開発など、21世紀の成長産業には女性の発想を生かせる舞台があります。
 問題は、発想があっても、それをビジネス・レベルにまで引き上げるノウハウ、経験が欠如していることです。自治体や商工会議所での研修や相談対応などに、もっと本気であたってもらいたい。「手取り足取り」のベンチャー起業というのも妙なぐあいですが、基礎的な知識を有しているか否かでは結果が大きく違ってきます。
 ちなみに日本の約3分の1しかない国土に日本とほぼ同数の人間が暮らすバングラデシュでは、貧しい人々にその場しのぎの金銭をまくのではなく、少額を貸し付けて自立を支援するための銀行があります。魚を与えるのではなく、魚釣りの方法を伝授するのです。「グラミン銀行」と呼ばれるこのユニークな銀行は、日本円でわずか1,2万円ほどの金額を無担保で貸し付けます。現地通貨に直せばそこそこの金額なのでしょう。
 貸付対象は貧しい女性たちで、彼女らは自分で編んだカゴや自分で育てた花卉を市場で売ったりして返済します。驚くことに返済事故はほぼゼロとのこと。
 モラル・ハザードはありませんし、なによりも自営業という雇用を生んでいるのです。 一方、一般的に日本の銀行は女性にはきわめて冷たい。まず女性というだけで相手にしてくれません。私自身、銀行で住宅ローンを借りるに当たって、「女性、単身、フリー」の3重苦を思い知らされる、ひどい扱いを受けた経験があります。私を邪険に扱った銀行は目利きがおらず、けっきょくつぶれました。当然です。そんな恨みを持つ女性は私の友人にもかなりいます。
 アメリカの場合も似たりよったりのようです。女性であることがハンディと感じたアメリカ女性たちは、なんと自分たちで銀行を設立しました。「ファースト・ウィメンズ・バンク」です。私も試しに口座を設けてみましたが、その後、業績不振で破綻したとか。
 現在、わが国が抱える不況、不良債権などの問題は男性の論理が破綻したことを証明しているように思います。精査して貸し付けたことになっている巨額な資金がバブルをあおり、その結果として、長年にわたる塗炭の苦しみを共有しているのです。

女性の側も頭の切り替えが必要

さて、失業・倒産対策について考えると、政府による雇用のためのセーフティネットはまだまだ不十分な点があることに加え、発想の転換ができていないことが問題です。
 ただ失業保険の受給資格の緩和といった旧来の発想の延長にとどまらず、女性というわが国最大の資源の活用を真剣に取り入れるべきです。ただその場しのぎの対策、ばらまきではいけません。女性を対象に「グラミン銀行」ではないけれど、将来的に資金回収まででき、かつ税収アップにつながるくらいの方針を立てるのです。本来ですと地域をベースにした信用金庫、信用組合などがその役割を担うべきですが、いずれもバブルの後遺症に苦しむ状況です。公的資金投入と引き替えに、そんな新しいタスクを課すべきです。政府系の金融機関は縦割りの弊害や今後の再編、位置づけについて検討中であり、また役所的対応も女性相手には不向きでしょう。
 女性の側も意識改革をしておかなければなりません。自立への心構えがこれまで以上に必要です。私の女友達には介護やベビーシッター、人材派遣などの起業を行い、成功している人もいます。経営ノウハウなどを共有して、日本新生の新たな担い手を育てていきたいものです。
衆議院議員 小池 百合子


前号へ 次号へ






コラム・メニューに戻る